大切な人が悩みを話し始めると、何か役に立つことを言いたくなります。でも、相手が求めているのは、すぐに使える答えとは限りません。言葉を選ぶ時間を待ち、分からないところを確かめる。日常の癒しを考えるうえで、話を聴くという身近な関わり方を見直してみたいと思います。
聞いているつもりで、返事を考えている
家族や友人の話を聞きながら、頭の中では解決策を探している。似た経験を思い出し、自分ならどうするかを組み立てる。相手がまだ話しているのに、こちらの返事はほとんど出来上がっていることがあります。
早く力になりたいのでしょう。それでも、自分の答えを出す準備に忙しいと、話の途中にあるためらいや、言い直した言葉を聞き落とします。困っている理由を、こちらの知っている事情だけで決めてしまうこともあります。
仕事がつらいという話でも、仕事そのものを変えたいのか、誰かとの関係を考えたいのか、今日は疲れを口にしたいだけなのかで、必要なやり取りは違います。最初の一言だけでは、まだ分かりません。
聴くときには、自分の中に浮かんだ答えを少し置いておく。よい助言を持っていることよりも、目の前の人が何を話そうとしているかに、もう少し関心を向けてみるのです。
沈黙を、失敗にしない
話が途切れると、何か言わなくてはと焦ることがあります。励ましたり、話題を変えたり、元気が出そうな言葉を足したりする。その気遣いがありがたいときもあれば、続きを話しにくくなるときもあるでしょう。
言いたいことが、最初からきれいな文章になっているとは限りません。口に出してから、少し違ったと感じることもあります。うまく説明できないまま、次の言葉を探しているのかもしれません。
黙っている理由を決めつけず、少し待つ。続きを聞いてもよさそうなら、どのあたりが気になっているのかを尋ねる。話したくなさそうなら、そこで止める。沈黙を埋めるために、無理に気持ちを引き出す必要はありません。
待つことは、ただ何も言わないこととは違います。携帯電話を見続けながら黙るのと、相手に意識を向けて待つのとでは、その場でしていることが違う。言葉が少ない時間にも、こちらの姿勢は表れます。
分かったつもりを、一度ほどく
長く付き合っている相手ほど、いつもの話だと思いやすくなります。前にも聞いた悩みだから、理由も答えも分かっている。けれど、その間に事情が変わっているかもしれません。
聞き取った内容を、自分の言葉で短く確かめてみる。同じ出来事でも、特につらかった点は別のところにあったと分かることがあります。訂正されたら、自分の解釈を守るより、今聞けたことを大切にしたいものです。
相手の気持ちを受け止めることと、相手の判断すべてに賛成することも、分けて考えられます。腹が立ったという気持ちを聞きながら、その後どうするかについては違う意見を持っていていい。無理に同意しなくても、話は続けられます。
スピリチュアルに関心があると、出来事の意味を考えたくなることもあるでしょう。ただ、相手が苦しさを話している途中で、学びや成長という言葉にまとめてしまうのは早い。本人がまだ見つけていない意味を、こちらから決めて渡す必要はありません。
聴く側にも、限りがある
丁寧に聴きたいからといって、いつでも何時間でも引き受けられるわけではありません。眠い日も、用事がある日も、自分のことで精いっぱいの日もあります。
今は長く聞けないことや、話せる時間を先に伝える。途中で苦しくなったら休憩を提案する。そうしたやり取りも含めて、人と関わる時間です。最後まで我慢して聞いて、後から相手への不満だけを抱えるより、今の自分の状態を知らせるほうが誠実だと思います。
助言が必要なのか、一緒に整理したいのか、まず聞いてほしいのか。迷ったら本人に確かめられます。意見を求められたときは、自分に分かる範囲を伝えればいい。すべての悩みに答えを出せる人になる必要はありません。
聞かせてもらった話を、別の人との話題にしないことも大切。助けを借りたい場合も、誰に何を伝えるかを本人と確かめる。その後の扱いまで含めて、話を聴く責任があります。
癒しを、会話の終わりに採点しない
レイキヒーリングの前後に気持ちを話す場面でも、相手をすぐに明るい表情にしようと急がずにいたいものです。話し終わっても悩みが残ることはあるでしょう。その場で笑顔になったかどうかだけでは、交わした時間の意味は決められません。
ここで考えている癒しは、会話で病気を治すという話ではありません。気持ちを急いで片付けられず、自分の言葉で話せる時間を、暮らしの中に持つということです。
次に大切な人が話し始めたら、最初の助言を口にする前に、続きをもう少し聞いてみる。分からないまま尋ねられること、言い直しを待てること。そんな関わりを重ねる中に、こころの豊かさを育てる余地があるのだと思います。
